全国学力テストの結果が発表されてから1か月たったが、その後この件に関する報道はほとんど見かけない。分析といっても分かりにくく、なかなか記事にならないからだろう。
読者の皆様のご子息が通う小中学校ではどうだろうか。個人票が返ってくるのは当然だが、
本校の結果は云々という発表や分析のプリント配布があっただろうか。
というか、
もうみんなすっかり忘れてるのでは?(笑)各学校で分析をしていようが放置していようが、別にそんなもの興味ないというのが
本音ではなかろうか。そんなの関係ねぇ状態だ。巨額の費用を投じて実施した側にすれば、
どうでもいいではすまないが、なにしろ初回だし、来年度以降も続いていくわけだから、
今後は分析も進んでいくのだろう。
ところで生徒たちからは「あんな問題、簡単だったよ」という声をよく聞いた。
そこで、どれくらい簡単で、どれくらい良く出来ていたのかを分析してみることにする。
テストの出来具合を見るのに、俺は度数分布表を良く使う。
偏差値は個人の成績を見るには良いが、全体の傾向は見えない。
最近は平均点もあてにならない。正規分布でなく、二極分化の度数分布になっているからだ。
このあたりのことを、グラフを使って解説してみる。

まず、グラフ1。横が点数、縦が人数を表す。正規分布というのはこんな感じになる。
中間層が多く両極端にいくほど少なくなるという釣鐘型で、山の頂点が平均点になるのが理想。
実際のテストの場合、いつも平均点が50点とは限らず、問題の難易度によって山が左右に動く。実力テストがこんな感じの度数分布になる。
簡単な問題のテストだった場合はグラフ2のようになる。最近は教科書も薄くなっているので、
定期テストの問題もあまり複雑なものは出さない。それに成績も、定期テストだけではなく、
小テストや日頃の授業で評価する割合が多くなっているので、別にこれでもかまわない。
むしろ勉強をしたという満足感達成感を生徒みんなに味わってもらうためには、点が取れるテストの方が好ましいわけだ。まさしくゆとり教育スタンダードである。
逆に、難しすぎる問題だと、山は左(下)の方へ動いていく。
こういうずれを正規分布に換算すると、自分はどれくらいの位置にいるかを示すのが、テストで
使われている偏差値だ。
最近では、グラフ3のように、ふたこぶ型グラフとなり、二極分化を示すことが多い。
特に定期テストだと、範囲も決まっているので、やる子はきっちり勉強してくる。
塾でもテスト対策の勉強をやってくれている。そして問題は簡単。
その気で勉強している子は、当たり前のようにいい点を取れる。
反対に、勉強する気のない者は塾も行かず最初から投げているので、下のコブとなる。
平均点あたりをとっている人数が少ないので、平均点だから真ん中あたりとは限らない。
下のコブが足を引っ張るので、平均点の価値は低くなり、平均点を取っていても順位は
真ん中よりも余裕で下という現象が起こる。だから、平均点にこだわっても意味がないのだ。
また、これは正規分布が上下にシフトした形ではないので、偏差値も意味を失ってくる。
今回の全国学力テストでは、「簡単だった」という声を裏付けるように、グラフ2のような、
山が上に寄った分布が多い。たとえばグラフ4は、中学校国語Aの国・公・私立の正答数分布。
少々見づらいがグラフの形だけを見てもらえばよい。今回使用したデータとオリジナルはこちら。
平成19年度全国学力・学習状況調査 調査結果資料 (国立教育政策研究所)
発表されているグラフを見ると、二極分化の典型的なふたこぶ型グラフは見られない。
国語A、B、数学A、発表されているグラフを見ると、どれも簡単テストのパターンだ。
数学の応用にあたるBでも、簡単パターンとまではいかないが、正規分布ではなく右上がり。
これもグラフをはりつけておくので、形だけみていただきたい。

ところで、公表されているグラフを見て、俺はなんだか違和感を覚えた。
グラフにやたら余白が多いのである不審に思った俺は、数値を拾ってグラフを書き直してみた。それが下の色付のグラフ。
縦軸の範囲を狭めてy軸方向を強調し、余白を減らしてみた。
オリジナルでは分からなかったのだが、途中にわずかなコブのような部分が見えてきた。
これは何だ? この程度で二極分化とは言いにくいが、なんだか気になる。

そこで今度は、公立・国立・私立の区別が分かるようにして、数学Bのグラフを描いてみた。
このグラフが今回の記事のメインなので、よーく見ていただきたい。
いかがだろうか。
上の方の正答率の高い部分は、私立と国立が占めている。
青と緑のグラフだけ見ると、明らかに簡単テストのパターンだ。
それに対して、頭打ちで下までダラダラ伸びている黄色いグラフは公立中学校。
黄色だけ見ると、二極分化の傾向が出ているのがお分かりだろうか。
少なくとも正規分布ではない。
わかっていたことだが、公立と私立の差はこれだけあるのだ。
そして、
下のコブもどきの正体は公立だったのだ私学の参加率は6割だし、おそらく自信のある学校しか参加していないだろうから(笑)、
すべてを言い切ることは出来ない。しかし少なくとも公立は、ほぼ全校が参加しているし、
成績上位では、圧倒的に私学に負けているのは事実だ。
これを見て公立も私学に追いつけとか馬鹿なことを言う教師は、さっさと私学に行けばよろしい。
公立学校は競争原理で成り立つものではないし、私学とは根本から成り立ちが違う。
それは、以前の記事でも述べた。県別の成績に、家庭環境や経済状況が大きく影響している。
公教育がこれではダメだ、と嘆くのは誰だろうか。
まず、金をかけすに子供にそれなりに高いレベルの教育を受けさせたい親。
それから、公立だけでトップから底まですべてカバーできると勘違いしている自惚れ教師。
そして、国は公教育にお金をかけていると国民に思わせておきたい政治家、役人たち。
いいじゃないか、公立がレベル低くても。というか、そっちに合わせてきたんだから当然だろ。
え、こんなことじゃ国が傾く? 大丈夫だってば、そんな心配しなくても。
公立がダメでも上の私学がレベル保ってるだろもうね、無駄な金はかける気ないんだよ、国は。コスト重視。だから今回の結果発表だって、
差がついていることが分かりにくいように、妙なグラフでごまかしているとしか思えない。
こんな統計の初歩の細工したって、読める者には無意味なんだけどなあ。
あわてる必要もないというか、もう新聞記事も出ないようなので、こんな感じでぼちぼちと分析していく。▼座布団1枚!と思ったらクリックよろしく
