前回に続いて、団塊と日教組その2。
日教組では、各学校の組合員組織を「分会」と呼んでいる。
その中に、30歳以下の組合員で構成する「青年部」、女性で構成する「婦人部」がある。
20歳代の女性教師だと、青年部と婦人部の両方に属することになる。
年度始めに、組合員だけが集まって分会長、青年部長、婦人部長を決める。
主任制に反対していた割には、こういう役職はきっちり決めるわけだ。
年度始めの恒例の組合行事だが、これが一種のパフォーマンスになっている。
職員会議のあとにこんな声がかかる。
「このあと引き続き分会会議を行います。組合員の先生は会議室に移動してください」
組合員が一斉に立ち上がり、職員室から出て行く。後には非組合員と管理職が残される。
組織率(加入率)の高い分会(学校)では、それだけで十分な示威行為だ。
分会会議が行われている間は、学校としての公式な業務はストップする。
だから分会会議は5時過ぎに開始したり、年度始めの春休み中なら休憩時間という扱いにする。
で、この青年部や婦人部で何をしているかというと、青年部ボウリング大会とか宴会とか、
土曜日の婦人部昼食会とかの活動がメインだった。
実質はレクリエーションのための組織だった団塊の世代は、とにかくみんなで群れて何かするのが大前提だった。仕事も遊びもみんな一緒。
今や懐かしいストもお祭り気分だった。たとえば早朝2時間ストライキはこんな具合だ。
スト前日。朝の職員打ち合わせで連絡事項が出尽くした後、校長が職務命令を読み上げる。
「職員は明朝のストライキに参加することなく、職務にまっとうすることを何とかかんとか」
すかさず分会長が立ち上がり、よく通る大きな声で、
「ただいま校長より職務命令が出ましたが、明日のストは予定通りです。組合員の皆さんは
職務命令に屈することなく!、明朝2時間ストへの参加よろしくお願いしまっす!」
おーっパチパチパチ(拍手)
この儀式はそこで終わって、特に険悪なムードもなく、さらりとその日の授業に入っていく。
そして教室では、「明日ストをするのでご理解ください」という保護者向けのプリントが
配られる。しかしこのプリント、組合員でない担任教師には当然配る義務はない。
替わりに組合員がよそのクラスで配布したこともあったし、
「なんで俺に配らせるんだ!?」組合員でない担任が怒ってゴミ箱に捨てたこともあった。
そして当日。
いつもなら出勤している時間、学校へは向かわずに各自で集合場所へ三々五々集まっていく。
たいてい大きな公園だ。前方のステージあるいは街宣車の上にはスピーカーが用意され、
○○教組とか◇◇支部とか△△分会とか描かれた旗が何本も立っている。
分会長が持つプラカードを目印に、学校ごとにかたまっていく。
団結ハチマキが配られたりする間に、だんだんと人が増え定刻が近づいてくる。
あちこちで「いやー久しぶり」「どう、元気してる?」などの声が聞かれ、同窓会的な
なごやかな雰囲気もかもし出している。
やがて前方では組合幹部の演説があり、最後は「団結がんばろう」で拳を突き上げて締める。
どこの労組のストも似たようなものだったろう。集会が解散すると、こんどは集団で
ぞろぞろと各自の学校に戻っていく。
学校には、校長教頭と組合員でない教師が残っている。通常の授業はできないので、
手分けして組合員が用意していった自習プリントを配って生徒の面倒を見ている。
今考えると、ストで手薄の間に生徒が暴動でも起こしたらどうするんだろうと思うが、
当時はなんとなく生徒は生徒でおとなしくしていた。保護者からのクレームもなし。
そういう時代だったんだろう。
学校に戻ってきてすぐに授業かというと、ここでワンクッションある。
「職場復帰は10時10分。遅れることがないように。ただし定刻までは職場に入らないように」
ということで、校門の前にハチマキをして並んで待つのかと思ったらそうではなかった。
「シーサー君どこ行くの。まだ時間じゃないよ、こっちこっち」先輩教師が手招きする。
ガランカランとカウベルを鳴らしてドアを開けたのは、行きつけの喫茶店だった。
学校の近所の喫茶店でモーニングなど食べ煙草を吸いながら、時間をつぶすのだ。
トラックが納品待ちしているようなものだな。
集会場所から一番遠い学校に戻るのに十分な時間を取っているので、近場ではこうなる。
教師が平日の朝っぱらから喫茶店にいても、教育委員会に通報する市民などいなかった。
「あれ。先生休みですか」「いえ、今日はストなんです」「ああそう、ご苦労さん」
学校に戻ると「ご苦労様です」職員室で残留組の非組合員教師や管理職に声をかける。
そして2時間遅れで、何事もなかったかのようにいつもと同じ一日が始まる。
団塊の先輩教師達に連れられていくストライキは、新人の俺にとっては、なんだかちょっと
遠足みたいにワクワクするイベントだった。
これで俺の給料が上がるのかとかいう期待感ではなく、「闘争」とか「戦術会議」とか
「職務命令」とか「断固として」とか物騒な言葉が飛び交う割には悲壮感のかけらもなく、
和気あいあいとしたものだったからだ。
今時こんなストライキをやったら、「授業時間を保障しろ」「2時間分給与を返還しろ」
「職場放棄の不適格教師は処分しろ」等々、非難ごうごうだろうな。ということで3に続く。▼座布団1枚!と思ったらクリックよろしく
