しばらくぱっとしなかった教育再生会議だが、久しぶりに新ネタを投下してくれた。
魅力ある学校作りに教員にもFA制を導入政府の教育再生会議(首相の諮問機関、野依良治座長)が、特色ある小中学校づくりに向けた校長の権限強化策の素案が12日、分かった。
校長の学校運営方針に基づき、教員を公募し配置できる「公募制」導入を盛り込んだのが特徴だ。教員の側から自分の得意分野をアピールし希望校へ転勤できるようにする「フリーエージェント(FA)制」も導入し、魅力ある学校づくりを進める校長の下に意欲ある教員が集まる仕組みとする。
素案は、13日に首相官邸で開く合同分科会で提示される。年末にも取りまとめる同会議の第3次報告に盛り込む見通しだ。素案はこのほか、校長の発案に基づき、一定の裁量で使える予算を配分するほか、校長の1校当たりの在職期間(現在は2〜3年程度)を最短5年程度に延長することも記している。 (2007年11月13日 読売新聞)
公立学校は、私学のように1校独立のスタンドアローンではない。市や町の学校が数多くあり、
職員は校長を含めていくつかの学校を順に転勤で回っていく。たとえば中学校卒業後、10年も
たってから母校を訪れても、知っている先生は一人もいないのが普通だ。
そして皆様よくご存知の通り、教師の質もいろいろ。転勤によって適度にシャッフルされ、
長い期間を通してみると各校の教員の質のばらつきは平均化され、公平に保たれる仕組みだ。
校長教頭も含めた教師の異動は、教育委員会の人事課が行っている。
だから校長には人事権がない。意見を上申しても参考程度に扱われるだけだ。
それどころか、校長自身も、ヒラ教師と同じように動かされる立場なのだ。
その校長に人事権の一部を持たせようというのが、フリーエージェント制だ。
教員が自ら希望して、特定の校長の学校へ転勤できるようにする、というと聞こえはいいが、
要所にとどめる慎重な歯止めと規制をかけておかないと、暴走する危険も含む。
教育再生会議の議事要旨を見る限り、さほど議論が深まった様子もないが、提案としては
長所が強調されるのが常だ。少なくともマスコミには食いつきやすい話題だったのだろう。
興味のある方は、
議事要旨よりも
資料の方が面白いので、そちらをお勧めする。
FA制が無制限に乱用されるとどうなるか、想定される極端なパターンを考えてみようか。
自信のある教師が手を上げるところから始まると思うのは、日の当たる表街道での話。
教育毒本の走る裏街道では、別の風景が見えている。
まず校長が、気に入った教師に「きみ、うちの学校へ来ないかね」とささやく。それだけで良い。
手続上は、教師が自分で転勤希望を出す形になる。あちこち手を回して、自分の息のかかった
使いやすい教師を集めて周りをかためていけば、校長を中心とした学校派閥が出来上がる。
これは実質的に、校長側からの教師指名制だ校長の任期も最低5年というから、たとえば10年もひとつの学校に居座れば、完全に自分の
思い通りに染め上げることができる。校長在任期間は、長くて10年というところだから、
今までと違って、校長になって初めて赴任した学校で、退職まで勤め上げることになる。
その何年間に、どこまで成り上がれるかの勝負だ。
これはもう、教頭時代から周到な根回しが必要だな。校長になると同時に自分の傘下に
集まってくれる腹心を、いかに大勢キープできるかだ。教頭時代に出来るだけ多くの学校を
渡り歩いて、めぼしい教師にツバをつけておかなければ。俺ならそうする。
もっとも俺は、管理職みたいな割の合わん仕事する気ないけどな(笑)
出来るヒラ教師の場合は、困難校へ転勤させられるリスクを回避するために、積極的に
FA制を利用するという手もある。強い校長の下、落ち着いている学校に希望を出せばよい。
校長には程々にしっぽを振っておいてやれば、校長在任中はその学校に置いてもらえる。
多少事務仕事が増えようとも、毎日生徒や親が暴れているような学校に比べたら天国だ。
ただしその校長が転勤するか退職した後、身の振りようをよく考えておかないと、
別の派閥の校長に干されることになりかねないので、気をつけなければ。
やり手の校長なら、自分の転勤と同時に手駒もごっそり連れていくだろうな。
そして策士タイプでない校長の下へは、結果的に力のない教師や新任が押し出されてきて
集まることになる。そして弱い校長は、条件の悪い困難校へ回されるという悪循環。
え? だったら生徒も学校を選べばいいって? そのための学校選択制?
フリーエージェント制で転勤先を希望して選べるとなれば、人気のない学校は教師も
行きたがらないし、生徒も来ない。めぼしい教師は力のある校長が手元に集めてしまって
いるので、いい教師が転勤でやってきて活性化することもない。
そして学校はどんどんさびれていくだけ。
学校をつぶす仕掛けがまたひとつ増えた弱肉強食の私学ならいざしらず、公教育で全面的にこれを許すのは間違いだ。
公教育の平等性や地域差の平均化と、正反対の方向なのは明らかだ。
そもそも学校の質や第三者評価が云々とか言う前に、地域格差は歴然として存在する。
一戸建てばかりの新興住宅地の学校から、生活保護世帯が半数近くになる下町の学校、
英語圏以外の外国人家族の子供がたくさん来ている学校・・・
俺達公立学校の教師は、辞令に従ってどんな学校へも黙々と転勤する。
どんなひどい状態の学校でも、がんばればいつかは好転できるかもしれないし、
たとえ毎日が地獄でも、何年か我慢すればいずれ転勤できる望みがあるからだ。
何も建設的な仕事をしなくても「あの荒れた学校で5年も苦労したから」というだけで、
勤務の評価が上がるという、良く分からない風潮もある。まあ我慢したご褒美だな。
それをお役所的だと叩くのは結構だが、俺達はどんな学校も生徒も見捨てることはない。
FA制乱用は、こういう公立学校教師の公僕たる自覚と良心も崩壊させることになる。
そしてこれらの学校をすべて同条件に扱うとか、競争させろなどと平気な顔をして言う
無知な奴に、公教育を語る資格はない。あまりにも現状が見えていない。
当然、フリーエージェント制の行き着く先も見えていない。
きっと日本の将来も見えていないことだろう。
FA制が実施されている自治体は、特別な学校とか、いいところ取りの段階。
普通の公立の全教員対象にやるのは別問題だ。もっとも地方はまたおきざりだな。▼座布団1枚!と思ったらクリックよろしく
