公立中学校教師の辛口教育コラム。一般の方に分かりやすく心がけてます。真面目なだけのセンセは服用に際して十分ご注意下さい(笑)
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センター試験や中学入試の定例行事を除いて、1月にメジャーになった教育関係のニュースというと、
なんといってもこれだろう。

有料授業スタート…杉並・和田中(2008年1月26日 読売新聞)
 東京・杉並の区立和田中学校(藤原和博校長)で26日、大手進学塾「SAPIX(サピックス)」の講師が担当する有料授業「夜スペシャル(夜スペ)」が始まった。

 週3~4回の夜スペは平日夜の授業が中心だが、都教育委員会の「義務教育の機会均等の点から問題がある」という“待った”で開始日が当初の予定から17日間も延びたため、毎週土曜午前に実施される英語の授業が、初日になった。

 この日の英語は午前9時から行われた。SAPIXの入塾テストに合格した同中の2年生計19人の中で、英語を選択した13人のうち、体調が悪く参加できなかった生徒らを除き、男子1人、女子10人の計11人が参加した。担当講師の年齢や詳しい経歴をSAPIXは明かしていないが、「特に優秀なベテラン」という紺のスーツ姿の男性。冒頭には、「頭の体操」と言いながら、英語のなぞなぞを出し、生徒たちが首をかしげながらも用紙に解答を記入すると、「正解だよ、優秀。素晴らしいじゃない」などと声をかけていた。

 ようやく実施にこぎつけた藤原校長は、「ホッとしている。生徒のために本当に良かったと思う」と話した。

 夜スペは民間のリクルート出身の藤原校長が企画。2年生を対象に月、水、金曜は午後7時から国語と数学を実施し、希望すれば土曜の英語の計3教科を受けられる。月謝はSAPIXの通常の半額程度で、国語と数学で1万8000円、英語も受けると2万4000円。

 予定の2日前になって、都教委が計画の見直しを指導したが、区教委が「保護者らでつくる組織が実施主体となる学校教育外の活動」と位置づけたことで都教委も容認に転じていた。


                               ・・・以下、引用全文は文末追記に掲載

 *「夜スペ」公式資料はこちら。
  和田中の校舎を使って夜間に塾を開きます(PDF) (地域本部HPに掲載) 
  和田中と地域を結ぶページ 

この校長はリクルートから来た民間校長で、あえて俺が説明するまでもないのだが、
興味のある方は、たくさん出ている氏の本でも読んでいただくといいだろう。
日経BP社「校長先生になろう!」は、氏が校長になって具体的に何をやったかが書かれている。
同業者、特に管理職は、いろいろ考えさせられることがあるだろう。
ただし、一般の方が読んでも、もひとつピンと来ないかもしれない。
とにかく、公立中学校で何が出来るのか、限界領域をいろいろ模索している最中だ。

学校選択制で入学希望者が多いことから、その地区では人気が高まっているそうだ。
保護者の皆様で、どうも誤解している方がいるようなので、あえて言わせてもらうが、
氏のやっていることは、日本中の公立中学校のバラ色の未来を約束するものではない。

現役中学生を使った民間の視点での臨床実験だ

俺は否定しているわけではない。ただ、実験だから、当然、成功するアイデアもあれば
失敗するネタもある。色物扱いなので、ふつうの公立中学ではありえないことも許される。
下駄を預けてゴーサインを出したのは行政だから、失敗ネタで公務員の教師が泥をかぶるのは
仕方ないところもある。「この校長の下じゃやっていけん」と転勤希望が出るのもごもっとも。

しかし、生徒も実験台だからな。中学生にやり直しはきかない。そういう意味では諸刃の剣だ。
民間校長の任期が終わったとたん、掌を返したように平凡な中学校に戻ることも十分ありえる。
もともと校長一人の独裁で突っ走っているからこそ、様々なアクロバットが繰り出せるわけで、
あそこを希望する保護者・生徒のみなさんは、それを承知で入学してもらいたい。
実験台という点では附属の学校も似たところがあるが、附属の実験は授業の中身だから、
和田中とは質が違う。こちらは学校そのものの成り立ちから手を加えているわけだから。

で、あの手この手のひとつが、この、一般名称不明の校舎利用の夜間塾「夜スペ」だ。
「平日の夜に学校で開く進学塾」といううたい文句があるが、なんだかんだ言っても、
塾に学校施設を無料で使わせているというのがその実体だ。
校長がコーディネートして学校を使わせておいて、主体は学校ではなく「地域本部主催の
私塾」だとか苦しい言い訳をしているが、なんだかなあ。
本気でこういう事業をやるなら、入札で業者を決定するのが筋だが、どうもそうじゃないわな。
いったいどういう経緯で進学塾サピックスになったのかも興味あるところだ。

校長はモグリの貸し教室屋か

結局、塾がこの実験に参加したのは、地域に貢献などという高尚な理由ではなく、
今まで塾に来ていなかった上位層の生徒を取り込めるという旨みがあるからだ。
中2の冬から軽くやっておいて、もっと本格的に勉強したい者は、適当な時期に引き抜いて
正式に塾本体に来てもらえばいい。塾の営業としては、なかなかおいしい勧誘手段だ。

いわば塾の格安お試し版だな。しかも、会場費、光熱費、管理費は公立学校が負担する。
つまり税金使ってるわけ。そして、参加者の親は実行委員として運営に参加するのが条件だ。
費用は通常の塾の半額とか言ってるが、こんなことしてりゃ、安くつくのは当たり前だ。
公務員たる中学校の教師が塾用の教材を作らされている、という疑惑を差し引いても、だ。

そして、たとえこの企画が途中でボツになって、せっかく初代モルモットになってくれた
生徒達が路頭に迷っても、「ご安心ください。うちの塾で責任持って面倒見ますから」で、
そっくり引き受ける。コケたときの保険までかかっているというわけだ。お見事。
でなければ、自分のところの客を取られかねない事業に、塾が手を出すはずはない。

誰が言い出したか知らんが、「落ちこぼれ」に対して「浮きこぼれ」という言葉がある。
和田中学の藤原校長も、口にしている。
すべてを低きに合わせる公立では、勉強のできる子は相手にしてもらえない。
公立学校はゆとり教育にどっぷりつかっていた。

いわば学習における生活保護レベルが主流だ

きみたち手のかからない子は自分でがんばってね、というのが公立中学おきまりのパターン。
この、相手にしてもらえない成績上位者たちを「浮きこぼれ」という。

別に望んでいるわけではないが、高度な学習をお望みの方は塾へどうぞ、ということだ。

そんなもの最初から分かっているって? そう、公立中学というのはそういうところだ。
俺自身も公立中学生時代にたっぷりと経験してきている。教師になってからも実感している。

高密度高品質を目指したら、詰め込み教育と呼ばれて「落ちこぼれ」を出していると叩く。
それではと、その落ちこぼれに焦点をあわせたゆとり教育に対して「浮きこぼれ」を指摘する。
いやはや、中庸は難しい。

学校利用の進学塾は「浮きこぼれ」対策だそうだが、公立が何をおいても面倒見るべきなのは、
公立中学以外、どこもかまってくれない生徒達だ。親にも見離されて、まともな生活をして
いないような生徒が、塾だ勉強だなんて、そんなもの、それこそよその星の出来事に過ぎない。

もちろん、すべての層の生徒に、個々に最適なあらゆる対策が出来れば言うことはない。
教師である限り、できる子は放っておいていいなどとは思っていないし、人としての礼儀を
すでに身に付けている生徒に、さらに高度な社会生活のマナーを教えてやりたい。
むしろ、一度でいいからそういう子たちを相手に、ケダモノに邪魔されずに、ハイレベルな
授業や、本当に人間的な学校生活をやってみたいと憧れてさえいる。

しかし、様々な制約の中でそれができないとなれば、優先順位は低い方からになる。

ところで、格安の塾「夜スペ」の購買層は、どんな家庭および生徒だろうか。
そもそも意識の高い生徒は、最初から塾に行っているから、こんな教室に来る必要はない。
成績上位の学力を持っていながら、理由はともかく中2の時点でまだ塾に行っていない生徒。
ちょっと考えれば、いまどきこんな子は少数派なのはすぐ分かる。
だから、全国に報道されて大騒ぎした割には、ネズミにたとえては失礼だが、大山鳴動して
たった10人ほどなのだ。

俺は、公立中学校が、成績上位者対象になんらかの対策を行うこと自体は大賛成だ。
不平等だなどという声があるが、明らかに層の違う生徒に、一律に同じことしかしない方が、
よほど無神経で悪平等というものだ。もっとも、それが一斉授業の背負う宿命ではあるのだが。

今回の件で大切なのは、「夜スペ」の様々な矛盾や問題点や疑惑をつつき出すことではない。

裏技を駆使し詭弁を弄さなければ

浮きこぼれ対策が出来なかった

俺はそのことを強調したい。
すぐれた民間パワーで、あふれるアイデアを駆使して実験をやってきた藤原校長でさえ、
こんな苦しまぎれの策しか出なかったというこの事実が、公立中学校の限界を物語っている。

この試みが目指しているものは、つまるところ、格安料金の公立塾だ。
それを成立させるには、一公立中学校の一校長の裁量だけでは無理があることを、藤原校長は
示唆してくれた。公立は公立なりのお役所的段取りをクリアしていけば、公立学校を補完する
機関として、親にとっても生徒にとっても有り難い施設が出来ることだろう。

親にとって、経営母体がどこだとか、費用がどこから出ているかは、二の次だ。
関心があるのは、家計からどれだけ出て行くかと、出費に見合った効果があるかどうかだ。
公立塾で安上がりにやられたら、一般の塾は客を取られるので、さらなる差別化が進むだろう。

ただし公立塾は、学校のあり方を根本から見直し、社会の教育システムを改編する事業になる。

そんなことを考えると、気楽に批判ばかりしているわけにはいかないのだ。

これ、中堅私学でやれば儲かるよ。どっかの誰かさんみたいに、傾きかけた私学を買い取って、
公立中学で実験したノウハウを使って、好きに経営すればいいんじゃないかな。
いい学校ができると思うけどな。いや、皮肉ではなくマジで。


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