公立中学校教師の辛口教育コラム。一般の方に分かりやすく心がけてます。真面目なだけのセンセは服用に際して十分ご注意下さい(笑)
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俺は野球は全くの素人だし興味もない。野球部の顧問もしたことがない。
部活の顧問は、興味も経験もまったくない者が仕方なくやっていたりするのだが、
別に野球を知らなくても教師はできる。採用条件にもそんなものはない。当たり前か(笑)
しかしこれは業務上無視できない話だし、実際に身に覚えのある事例なので少し解説しておく。

少年野球監督、積極的に進学に関わる 特待生会議で報告(2007年08月20日 朝日新聞)
日本高校野球連盟の「高校野球特待生問題有識者会議」の第3回会合が20日、東京都内であり、硬式少年野球の監督らから事情を聴いた。選手の高校進学で学業成績が推薦基準に足りなかったときに、監督が高校関係者に働きかけて入学を後押しするなど、積極的に進学にかかわっている実態が報告された。

 関東と近畿の2チームの監督が状況を話した。両監督とも中学校の成績表を提出させて保護者と面談。生活態度や進路について指導しているという。

 第2回会合では中学校関係者から、中学を介さないで選手の進路が決まっていく現状を問題視する声もあった。それについては「高校側から直接話がくる」「中学と接点を持とうとしても持ってくれない」と説明した。

 第4回会合は9月14日に行われる。


中学校の3年生の個人保護者会。呼び名は個別懇談会でも三者面談でも何でもかまわない。
生徒と保護者と担任で話をする、あれだ。3年生では進路決定が控えているので真剣だ。
どの高校を受験するか、自分の成績資料を前にして理想と現実が怒涛のせめぎ合いをする。

値引き交渉や賃金闘争ではないので、生徒や保護者がいくら粘ってもそれで結果が変わる
わけではない。我々教師は、過去の卒業生のデータや高校の状況や生徒の様子から判断して、
合格可能性やその高校との適性をアドバイスする。それも担任個人の裁量や経験によるもの
ではなく、学年所属の職員を中心に、長時間の会議で検討した結果を元にして話をする。

早い話、進路の指導は、とてもじゃないが担任一人の技量でできるような代物ではないのだ。
進路指導主任という係は中学校で一番事務作業量が多く、段取りとスピードが要求される。

そういうことを前提として、ここから先をお読みいただきたい。
3年生の個別進路懇談会で、こんな会話があったとしよう。

保護者 「うちの子は○○高校を受けようと思います」
担 任 「前から進路希望は○○高校ですね。ところで、なんでそこがいいの?」
生 徒 「やっぱ野球したいし。夢は甲子園」
担 任 「なるほど。ところで進路希望には第1希望しか書いてないですね」
保護者 「はい。この子の成績だったら受かるそうなので」

ちなみにこの真っ黒に日焼けした野球少年は、野球の才能はあっても勉強はさっぱり。
まともに受験したら、憧れの○○高校に合格するには滑り込みアウトの成績である。

担 「おかあさん、受かるって、それどこで聞いてきたんですか。塾ですか?」
保 「いえ。(少年野球の)監督が『これなら大丈夫だ』って」
担 「そりゃ確かに、野球の技術は大丈夫でしょうけど、シーサー君英語8点ですよ。
  数学だって13点、国語はまあ34点とか取ってるけど、これ大丈夫じゃないですよ」
保 「いいえ先生、それがね、監督にちゃーんと通知表も見てもらって『ちょっときついかも
  しれんが、俺が高校の監督に話つけとくから安心しろ』って言ってもらったんですよ」
担 「いや、あ、あのですね」
生 「高校に行ったら部活も勉強もしっかりがんばります!(^-^)」
保 「そうよね。ということで先生、よろしくお願いします(^-^)」

親子揃って満面の笑みを浮かべている。どこを受験するかとかいう話じゃなくて、
完全に合格の内定をもらった気分で出来上がってしまっている。進路相談じゃなくて報告会だ。
少年野球の監督というのは、こういう場面で我々教師の前に突如登場するのだ。
しかも過去に何回かあった事例で、いつも同じようなパターンで。

はっきり言って、これ困るんだよな

登場するといっても、少年野球の監督が中学校へ来るわけではない。来ていただく必要もない。
「中学と接点を持とうとしても持ってくれない」と記事にあるが、これは納得できる。
俺は会ってくれと言われたこともそれを拒絶したこともないが、残念ながらお会いしても
我々の立場としてはどうにもならないのだ。

なぜか。

正規ルートのまっとうな進学指導に、第三者の少年野球の監督が介入する余地はないからだ。

生徒を取る私立高校側の参考資料として、生徒の技能について情報提供することは出来る。
それが「高校側から直接話がくる」ということだ。
高校は、選手が欲しいから情報集めをする。中学校で部活に入っている生徒なら、試合を見て
スカウトするなりツバをつけるなり出来る。顧問の教師に話を聞くことも出来る。
そうでない生徒、つまり少年野球で活動している子は、その監督に話を持っていくわけだ。

問題なのはそこから先。少年野球の監督が、進路指導と称して自分の守備範囲以外のことまで
生徒と保護者に吹き込んでしまうことがある。野球は野球、学校のことは学校のこと。
それぞれのテリトリーを守りつつ協調路線でいくべきところを、領空侵犯してしまうんだな。

たとえば学校の成績。その生徒が中学校の中でどんな生活を送っているかも監督は知らない。
当然のことだ。見ていないんだから。そのはずなのに、
「中学校の成績表を提出させて保護者と面談。生活態度や進路について指導しているという。」

あのさあ、俺は別に少年野球に恨みも何にもないんだけど、中学校の成績表って通知表?
いまどきの絶対評価5段階の通知表が、進学指導にどれだけ役に立つのか分かってる?

昔は相対評価で、4や5なら優秀で3は普通くらいで、それぞれ何%くらいか決まっていた。
今の絶対評価だと、生徒の半分以上が4か5なんて成績をつけている中学はいくらでもある。
4なんてついてたら、ふつう良く出来ると思うじゃないか。実は学年順位は中以下だったり。
受験対策でわざと成績をインフレさせて、内申書の数字を粉飾することだって合法なんだぜ。
まあそんな目先だけのモラル無視の小細工が、いつまでも通用するわけないんだけどな。

で、この記事の少年野球監督は、そういう通知表を見て進路指導をしているのだろうか。

あんた自分の立場分かってる?

データを山ほど持ってカリスマ講師をそろえている予備校や有名進学塾とは違うんだぜ。

そして俺達は、夏の総体が終わって引退してフラフラしかけている3年生連中の尻を叩いて
勉強させて、何度も個別懇談会をして保護者とも話をして、私立高校の営業担当教師と面談し、
生徒のための調査書(内申書)を書いて願書を点検して、時には親が忘れた受験料を立替え、
入試当日は朝早くから駅に立ち、高校の校門前で生徒たちを待ち構え、合格発表の日には
生徒と共にガッツポーズで叫び、落ちて呆然としている奴を学校に連れて帰って来るのだ。

そういう日々のすべてを俺達は進路指導とか進学指導とか呼んでいる。それが俺達の仕事だ。

すべての教師がダメ教師でないのと同じように、すべての少年野球監督がこうだとは言わない。
しかし、先にあげた個別懇談での会話のような、中学校を無視した安請け合いをしてもらうと、
生徒も保護者も勉強しなくなっちゃうんだよ。それに通すべき筋がどこか分からなくなるだろ。
そりゃあんたはいい顔ができて気分がいいだろう。

「あいつは俺が高校に入れてやった」ってね

それでもし受験に失敗したら、それは中学校が悪いって話にしておけばいい。
どうせ中学の先公が内申書ムチャクチャ書いたんだろう、とかな。なにしろ責任がないから。

私立高校の野球部顧問と話をする場合は、まるきり違う。相手は権限と責任を持ったプロだ。
生徒の野球の技量を見極めると同時に、営業担当でもある。たとえば成績が足らない場合、
「いくらエースでも英語8点では合格できない。受験までにしっかり勉強させてくれ」とか、
「最低30点取ってくれたら何とかなる」とか、高校としての準公式発言になるわけだ。
それは個別懇談会で保護者や本人に伝えられる重みのある発言でもある。

そして最後に。
「少年野球監督」という肩書きが、野球以外の世界で社会的にどの程度通用するかだな。
何度も言うが俺は少年野球に恨みはない。しかし、少年野球監督という肩書きだけで、
どこの誰とも分からない人間を無条件に信用することはないし、自分の子供を預ける気もない。
いったいどういう人間なのか、必ず会って話して自分の目で確認する。

ましてそれが、生徒の人生を左右するかもしれない仕事の上となればなおさらだ。
社会でプロが仕事をする時に肩書きが重要なのは、所属する組織の信用と責任を表すからだ。
それがない「少年野球監督」としての言動は、外の世界では慎重にしておくのが賢明だろう。

それを考慮せずに、野球の世界特有の倫理で私学や一部の「少年野球監督」が生徒を駒にして
動くなら、我々公立中学校の教師だけでなく、広く世間の信用を得るのは難しい。

もっとも最近では、教師という肩書きなんかで無条件に信用してはもらえないけどな。
それでも中学と高校、教師と教師の間に、プロとしての仕事や仁義はきっちりあるからね。

中学生だけでなく、近所の悪ガキ全部をたばねてくれている太っ腹の監督もいる。
「校外のことは任せとけ」と、俺達はどれだけ助けられたか。そういう立派な人もいるのにな。


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